静かな大地

静かな大地

静かな大地

★★★☆

北海道開拓時代の群像的な話。アイヌ語の響きが神話的な雰囲気を醸しつつ、厳しい時代の現実が描かれていて軽い話ではありません。「」無しの会話文が物語的で印象的。
狭間にいるといろいろ巨大な力が働いて個人を壊してしまう傾向は、システムが巨大化した現代の方が大きかったりすると思う。
アイヌの神話、死生感がバランスとれてて気になり続けている。

熊の神に呼ばれるシーンはやさぐれパンダ思い出してしまった。

アイヌ語の響きの美しさの秘密。「チセを焼く」より引用。

総じてアイヌは言葉の民である。
民族には得手不得手があるらしい。人でも、ある者は音楽に秀で、ある者は細工物がうまい。また芝居に長けた者もいる。
民族もまた同じ。そしてアイヌの場合は言葉の力、物語る力が抜きんでていた。そうでなくてどうしてあれほどのユカラ、無数のウウェペケレ、さまざまな神や英雄や動物や美女や悪党の物語が残せるだろう。
アイヌは大廈高楼を造らず、芝居を演ずることなく、具象の絵を描かず、交響の楽を奏しなかった。それらはすべて言葉の建築、言葉の絵、言葉の楽となった。